2012-10-14

ズフラート(ハーブティー)


風邪をひいてしまった。咳が止まらないので、何か薬はないかと探していると、昨年シリアで買ってきたズフラートが出て来た。ズフラートとは、ハーブティーの一種で、シリアでは普通に飲まれているが、咳にいい、と風邪の時はよく勧められたものだ。

お湯を沸かしてズフラートを煎れ、飲んだ。この「花のお茶」は喉の奥にゆっくり沁み、体を温めてくれる。両手でカップをもち、お茶の湯気を吸い込みながら、先日、トルコ国境リーハニーエ周辺の、シリア側の村で自由シリア軍のロジ隊と働いているOの言葉を思い出した。

シリアからトルコに20万人近い避難民が流れているのは周知であるが、最近、トルコ側は、その対応に苦慮しており、受け入れを制限し始めている。そのため、多くの避難民が今Oのいる村や、その周辺で足止めを食らっているというのだ。

ここに来る避難民の多くはアレッポからの人たちであるという。昨今のアレッポ状況の極端な悪化で、避難民は増え続けているが、彼らはトルコに抜けることができず、この村に宿営せざるを得ない。

この彼らのために自由シリア軍のロジ隊は、数箇所でキャンプを設営しつつあるが、そのために必要な、極めて基本的な物資に事欠いているという。テントそのものも追いつかず、オリーブの木の元で暮らしているような家族もいるのだ、と。

「もうすぐ、寒くなります。もしこのままの状態が続いたらどうなるのか?」

彼らは勿論一般市民だが、負傷して、ここまでたどり着いたものもたくさんいる。しかし、その手あてのための薬や設備は勿論、十分であるわけがない。また宿営状況が悪いことから、病気も多く、特に最近では、結核と思われる病気がはやり始めたらしい。彼がいうには、「そのこともあって、今日、トルコは100人の避難民の患者の入国を受け入れましたよ」という。

「私たちは精一杯やっている。なのに、事態は硬直したように、のろのろとしか動かない。状況は極めて悪い。何が起こりつつあるのか、どうしてこんなことになってしまっているのか、といつも自問自答するしかない。」呻くようなメッセージだった。

私が咳をしていたら、黙ってズフラートを煎れてくれた、優しいシリアの人たち。今、彼らは何をもって、彼らの体を温め、心を休めることができるのだろうか。そして、私は、何をもってそれを手助けできるのだろうか。