数日前の朝、ベイルートに避難しているはずの友人、アブ・アミーンがFBに「ヤヨイ、元気?今アレッポにいる。猛烈に寒い。吹雪が来るらしい。」とメッセージを送って来た。彼は家族とベイルートに逃れてから一年近く経つが、所用のため、一ヶ月ごとにアレッポに帰って来ているらしい。
「誰もいない家は、余計に寒さを感じる。だけど、僕にはまだ家がある。でも、家を追われた人たちはどうなのだろう。アレッポへの帰路で見た村々は、多くがゴーストタウンのようになっていた。ほら、ハミード先生たちと行った、ジャッブール湖畔の村だよ。覚えているだろ?あの村の人たちは、どこの寒空の下にいるんだろう。」
彼の独り言のようなメッセージは、途中で途絶えた。おそらく、停電か、ネットが切れたか。
彼が伝えてくれたとおり、昨日、今日と、シリアでは大雪となった。
シリアでは、時に雪が降る。そして雪が積もると、老いも若きも、誰彼なく町中で雪玉の投げっこを始める。ぼんやり歩いていると、どこからともなく飛んで来た雪玉にやられる。でも、誰も怒るものなどいない。嬉々としてやり返したり、逃げ回ったり。雪の日は、町中が無礼講なのだ。
雪への備えをしていない車は、スリップし、他の車とのニアミスも。ぶつけられると、それなりにもめたりはするが、でもなんとなく、雪に免じてそれほどの大きな騒ぎにはならない。
雪の日には、ほかほかと湯気のたつ暖かいサハラブ(コーンスターチでとろみをつけた甘いホットミルク)を売る道ばたの屋台は大流行りだ。ふりかけられたシナモンの香りが、熱いこの飲み物とよく合う。
陽がさしてくると雪は急速に溶けるので、人々はそれを惜しむように、雪を楽しむ。雪でべたべたになった服は、ストーブの煙突につけた物干に干し、その周りで熱い紅茶とカアケ(乾パン)を食べる。
そんなこんなが、シリアの雪の日の情景だった。
しかし、今のシリアには雪は脅威でしかない。雪が降り始めたと思われる頃に、早速フェースブックに吹雪の中に吸い込まれそうなみすぼらしいキャンプの写真がアップされた。
また、今朝は雪を被ったアレッポ城とアレッポの町の写真がアップされていた。こんな状況でも、アレッポ城は鉛色の空を背景に凛とたっている。
「破壊と、痛みと、死と、そして寒さ、にも関わらず、雪に白く覆われたアレッポはなんて綺麗なのだろう」と写真につけられたコメントは言う。