2012-07-07

奈々子の友達Sちゃんの決断


6月の初めだっただろうか、娘の奈々子が「お母さん、Sちゃんがホムスに仕事場を変えるらしいよ」と言った。え、と一瞬耳を疑った。

Sちゃんは、ホムスに両親の実家がある。数年前、奈々子が他の友達と一緒にベイルートに言った際、行き、帰り、その実家で世話になった。現在も、他の親戚も含めてまだホムスに残っているとは聞いたが、わざわざ今、この時期に彼女が行かなくても。

しかし、もう決めてしまったようだった。彼女は私たちが2月にシリアを離れるときに、シリアの現状を知ってほしいと、手紙を託してくれた。あのころから思いつめてはいたことは知っていた。しかしこの決断・・・・。ホムスの一部は壊滅的な状況だが、まだ街のなかでも大丈夫なところはあるのだろう。だけど、アレッポよりは、かなり状況は悪いのは周知である。

そのあと、彼女は、何日かたって、フェースブックに「ホムスに着いた」という知らせを出したらしい。それ以外のことはわからない。仕事といっても、まともに出来る状況なのか?

女医のSさんとスカイプをしたときに、彼女は言っていた。「勇敢なのか、気違い沙汰なのか・・・、でも彼女は敢行したのよね。」と。前の彼女なら、絶対に反対意見を言ったであろう。しかし、今はSさんでさえ、彼女の決断を頭から否定しない。事態がそうさせていることが、Sさんのある種の沈黙から読み取れる。

彼女を送り出した親御さんはどうなのだろう。Sちゃんの父は退役軍人である。Sちゃんが反体制デモに行くことを怒っていたという。しかし、今回、彼はどのようにして彼女を送り出したのだろうか。

お父さんたちの時代はずっと黙ってた。私たちまでで黙りはおしまいなのよ。2月に奈々子が会ったとき、彼女はそう言っていたらしい。

自分の娘の決断が、もし、このようなものにならざるを得ないとき、私は何を考えるだろうか。

今は、彼女の無事を祈るしかない。