2012-08-16

トルコの離反者キャンプとアレッポの不気味な沈黙


数日前に、ふとしたことから主人の姪っ子の消息がわかった。彼女は、警官で今は離反してトルコのアンタキアの自由シリア軍司令部にいる彼女の夫とともに、離反者専用のキャンプにいるらしい。彼女の夫は、今回、反政府のひとつの砦であるマアッラト・ル・ヌアマーン出身で、この町に住んでいたが、数ヶ月前に所属の警察署を離反し、トルコに逃れたという。

甥っ子のハムドゥが、彼がヤヨイと話したがっているから、と彼のスカイプ・アカウントをくれた。コンタクト・リクエストを出したとたんに、承認の返事が届き、いきなりコールがあった。

彼は、まず姪っ子が声を聞きたがっているからと、姪っ子にかわってくれた。久しぶりに聞く彼女の声である。そして彼女は、「Mおじさんと家族もここにいるのよ」と伝えてくれた。

M?義弟のM?では、彼らはどういう経緯かはわからないが、どこかで合流したのだ。あいにくその日は、Mはイスタンブールに行っていていなかったが、とりあえず彼の消息もわかり、それなりに安堵した。

彼女は、「キャンプの生活は非常に厳しいけど、今はどうしようもない。でもアレッポが懐かしくて仕方ないわ」と言っていた。彼女らは、特に立場上、当分はシリアに戻れないだろう。

その後、彼女の夫MSと話すと、彼は、現地で司令部の広報担当をしているという。「離反はしたけど、前線には行きたくない。でも、現況のために、何かをすべきだ。だから広報を選んだんです。」という彼に、給料なんかもらってるの?と下世話なことを聞いた。

彼が言うには、給料などない。ただ、キャンプにいるので、食住は無償、あとはシリアから持ち出した貯えを少しずつ使って、必要なものを手に入れているそうだ。

「アレッポからの情報も、結構頻繁に入るし、気になるだろうから、また聞きたいことがあれば答えます。ちなみに昨日来たアレッポ城の写真を送りますよ」とダメージを受けたアレッポ城の写真を送ってくれた。

夫の一族は、夫の影響か、職業や日常生活は考古学などに縁遠い割には、遺跡に関して、それなりの理解を示してくれている。彼も、FBに自由シリア軍の兵士が遺跡を破壊せぬよう、という主旨のポストをしていた。

あれから数日。ネットのニュースは、アレッポへの大規模攻撃を伝えるが、詳細は不明である。

問題は、この2日というもの、アレッポの知人、友人が誰もオンラインに来ないことである。甥っ子が3日前にチャットを仕掛けてきたとき、少し用のあった私は、またあとでね、と応答した。

しかし、それ以来、みんなが沈黙している。電話も携帯、地上電話ともつながらない。心配なので、まだレバノンにいるSさんに聞いてみた。彼女もやはりアレッポとの通信を試みていたが、同じく、誰ともつながらないという。

アレッポで何が起こっているのか?不気味な沈黙の日々が続く。

アレッポ、ハムダニーエ地区の砲撃を受けた建物。
教え子のSが住んでいた。彼は、とりあえず無事で、今田舎に帰りついたらしい。