2012-04-02
爆破事件の日の午後
爆破事件のあった日(2月10日)は、久しぶりの快晴であった。しかし、爆破事件は、この明るい日を一瞬のうちに暗い日に変えてしまった。
爆破現場のテレビ中継を見たり、みんなであれこれと話しをしているうちに、金曜礼拝の時間が近づいてきた。モスクは家から歩いてすぐのところにあるし、爆破事件もあったことだから、とにかく家にいたほうがいいと皆で言い合っていたところに、夫の息子が入ってきた。
「さっき、黒覆面して銃を持ったやつらが7-8人、ピックアップに乗って近くの通りを通っていったらしいぞ。親戚のxxが見たって。しかも『la illah illa allah』 (アッラーの他に神はなし)って書いた黒い旗を持ってたって言うぞ。」と言う。「それってアル=カーイダの旗印じゃない。」と誰かが言う。みんな、そうだ、そうだという。
真相は別として、なんともイヤな状況になってきたと思った。勿論、アル=カーイダが爆破事件の直後の緊張の中で、旗をおったてて皆の前をこれ見よがしに通っていくなどという愚を犯すとは思わないが、幼稚な手段であれ人心を迷わせるような輩がいると言うことであろう。
しかし、うわさはさらに流れてくる。
「バーセル・ロータリーあたりで、今銃撃戦が始まったらしい。」「空港へ行く道のロータリーでも、撃ち合いになっているみたいだ。」「ムハーファザのところでもやってるみたいだぞ。」と、次々にニュースが入ってくる。ムハーファザといえば、ここからもそれほど遠くない。男たちは、野次馬的なものも含めて、さらにいろいろと情報を交換し合っているようだった。
そのとき、義妹が、「ヤヨイ、来てごらん。」と私を窓のほうに呼んだ。何?と聞くと、家の前の公園の入り口を指して、「ほら、あそこ。シャッビーハ(治安機関に雇われた集団)。銃を持ってるのわかるでしょ?」と言った。
確かに、武装した4-5人が公園の入り口のところに立っている。彼女は、「今日は多いわね。いつも金曜日にはモスクのところとか、公園にもいるけど、今日はやっぱり多いね。」と言う。
シャッビーハは、もっと、それとはわからないいでたちをしており、銃を持たされているのは「正規」の治安要員だ、と言うことを後から聞いたが、みんなこの類の取り締まり要員を一般にシャッビーハと俗称してしまっているようだ。
いずれにせよ、いつも食糧を買出しに来ていたこの地区に、銃を持った者がいるのである。
爆破事件は勿論衝撃的なことであるに違いないが、生活圏に銃が入り込んだこと自体に、なんとも形容しがたい思いを抱いた。
いいお天気だったので、公園には子どもも数人遊んでいるのが見えたが、その横に銃を持った男たちがいる。
「金曜日になると、やつらはそこらじゅうに張り込んでいるんだ。」と言っていた夫の話を今さらながらに思い出していた。