2012-03-27
閉塞感
今まで、先月(2月)のアレッポ滞在のことを書いてきたが、帰国後もシリア情勢が良い方向に向かっているとは思えない毎日が続いている。
三月中旬にもダマスカスとアレッポで連続爆破事件が起こり、いよいよ見境のない殺戮がこれらの二大都市にまで及んできた。コフィー・アナンらの交渉も、なんら事態を前に進めるに至っていないようであり、友人らも、明日の読めない日々を過ごしている。
先週の金曜日、アレッポ市北東部ミーダーン地区に住んでいる教え子とチャットをした。
「どう?元気?」と聞くと、「元気ですよ。私たちは大丈夫。」と言ったあと、「でも今日、家のすぐ近くで爆破未遂事件がありました。」という。「えっ」と驚く私に、彼女は平然と、「でも、爆発する前に発見されて、全然平気でしたよ。」と続ける。
『フェースブック』を見ると、彼女の友人から彼女のウォールへのポストで、「すぐ近くだったみたいだね。」というのがあった。「大丈夫なわけないじゃない。ほんとにすぐ近くだよ。」と言うと、「でも、お姉さんはあのあとスークに買い物にも行ったし。私たち、もうかなり慣れっこになってきました。」と返ってきた。
さらに、昨日、旅行代理店をやっている友人からはこんな話しを聞いた。
状況はどうかと問う私に、「治安状況とかは、君が2月にいたときより悪くなっているけど、私の商売は悲しいかな、今すごく繁盛してるんだ。」と言う。「どうして?」と聞くと、カイロ行きの便を使う客が非常に多くなっているのだと言う。ただ、と彼は続ける。「みんな片道チケットなんだよ。しかも、カイロからリビアに飛ぶんだ。」
リビアでは、革命後、いろいろなプロジェクトが立ちあがっているらしく、シリアで職のない、どちらかと言えば貧しい層の人たちが、仕事を探しにリビアに行き始めたようなのである。
「だから、いくら儲かっても手放しでは喜べない話しなんだよ。」「政府は、我々は十分に知ってるよ。40年付き合ったんだから。君も知ってるだろ?だけど、じゃ、反政府側はどうかって言うと、一枚岩じゃない。」イヤホンにため息が聞こえてくる。
アレッポは、春の陽気になりつつあると言うが、彼の声は低く、いつか変るであろう状況を一日一日待つしかないのだ、とつぶやいた。